犬や猫が春にかかりやすい健康トラブルは? マダニやストレスに注意
日に日に暖かくなってきました。花粉症に悩ませられる人も多いですが、犬や猫は春、注意すべき病気はあるのでしょうか? 今回は、犬や猫の健康リスクのうち、季節性があって春に高まるものを獣医師の山本昌彦さんに挙げてもらいました。

春先からマダニやノミが活発に

犬や猫にとって、春になるとリスクが高まる病気や健康トラブルといえば、何でしょうか。山本さんが真っ先に挙げたのは、マダニやノミに関する疾患でした。

「マダニやノミは日本全国どこにでもいて、犬や猫が草むらなどに入ると、毛にくっついてきて潜り込み、皮膚に噛みついて吸血します。血を吸われるとかゆみや腫れが出て皮膚炎になったり、一度に大量のマダニやノミに寄生されると貧血になったりすることがあります」(山本さん・以下同)

◆人に感染する病気も媒介
さらに恐ろしいのが、マダニやノミに感染している寄生虫が、吸血の際に犬や猫の体内に入り込んでくることです。ライム病や日本紅斑熱、Q熱(コクシエラ症)、ダニ媒介性脳炎、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome: SFTS)瓜実条虫など、人に感染する病気も媒介します。

「マダニやノミは、冬季は活動量が低下しますが、気温13?15℃ぐらいを境に、活発化して積極的に吸血や繁殖を始めます。冬が終わったばかりの春先には、飼い主さんも予防を失念することがあるかと思いますが、できれば通年で予防していただきたいです」

動物病院で予防薬を処方してもらって、定期的に予防するのがベスト。また、春夏は犬の散歩から帰ったら入念にブラッシングをしながらノミ、ダニがいないかチェックできるとなお安心です。猫は今では室内飼いがほとんどだと思いますが、“外から帰ったらチェック”を習慣づけたいですね。また、犬や猫が外に行かなくても、例えば飼い主さんのズボンの裾にくっついて家に入ってくることなどもあるので、同じようにチェックするとよいです。

犬は花粉アレルギーにも対策を

さて、今年は花粉の飛散量が例年に比べて特に多いと話題です。東京でいえば3月中はスギ花粉、4月にはヒノキ花粉が大量に飛び散ることが予想されています。今年ついに花粉症デビューしてしまったという声も聞こえてきますが、犬や猫の場合も花粉症に苦しむことがあるのでしょうか。

「犬や猫も、花粉に
アレルギーのある子がいるにはいますが、人間の花粉症のように鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどの症状に見舞われることはあまり多くないと思います。鼻水やくしゃみなどの呼吸器症状よりも皮膚症状の発現が多いです。皮膚がガサガサしてかゆがったり発疹が出たりする症状が中心ですね。このような花粉アレルギーは、主に犬に見られます。猫では非常にまれですね」

◆犬の花粉アレルギーは散歩帰りのブラッシングで対策
犬の花粉アレルギーも散歩帰りのブラッシングで対策できるといいます。

「要はアレルギーの原因物質を除去すればいいので、ブラッシングしたり、体をタオルで軽く拭いたりすると効果的です。犬のいる場所に空気清浄機を置くのもいいですね。ヒトの花粉症と対策が通じますが、飼い主さんが帰宅した際には服に付着している花粉を落としてから家の中に入るのも大事です。

花粉由来のものに限らず、アレルギー性皮膚炎もアトピー性皮膚炎も冬より春夏のほうが、症状が重くなりやすいことが多いです。アレルギー症状が見られた場合には、アレルギー検査で愛犬、愛猫が何にアレルギーを持っているか調べておいて、アレルゲンを遠ざけてあげることが大切です」

同居家族の変化や転居はストレスに

また、春は生活環境の変化によって、犬や猫にストレスがかかることもあるといいます。

例えば、犬や猫と一緒に暮らしてきた飼い主さん一家の娘さんや息子さんが進学や就職で家を出たり、お父さんやお母さんが転勤になったり。一家で引っ越す。家族の誰かが引っ越す。あるいは転居はしないまでも進学や異動でライフスタイルが変わってペットと接する時間が減る。こういったことが春は他の季節以上に起きやすいといえます。

「そうなると、犬も猫も寂しくなってストレスに感じて、元気がなくなったりします。食欲にも影響がでたり、なんとなく落ち着かなくなったりすることがあるかもしれません。一概に「ストレスがかかるとこんな症状がでます」とは断定できず、個体差があると思います。このような場合、ストレスの原因を取り除くことはできないので、対症療法というか、様子を見守って、ストレスで体調を崩したときに対処してあげることが大切になってきます。

犬はストレスもやはり皮膚炎の形で表れることが多いかなと思います。よくみられるのが、ストレスが原因で体をしきりに舐めたり噛んだりしての皮膚炎です。猫の場合はストレスを感じると食欲が落ちたり、眠ってばかりになったり、過剰にグルーミングして皮膚に炎症が起きたり、下痢をしたりします。愛犬や愛猫と普段以上にコミュニケーションを取りながら、心因性の諸症状については獣医師に相談して適切に対応しましょう」

◆犬の場合は4?6月に狂犬病の予防注射を
このほか、犬の場合はもちろん4?6月に狂犬病の予防注射を受けなければいけません)。また、ゴールデンウィーク頃からは熱中症のリスクが高まってきます。熱中症もノミ・ダニも、夏のものだと思わずに、春のうちから対策して、楽しく元気に過ごしたいですね。

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。

取材・文/赤坂麻実

PETLIFE24事務局2023.03.17

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