市街地にも…シカ目撃相次ぐ 熊本市・白川沿いに集中 農業被害や交通事故など懸念
昨年末から、熊本市でニホンジカの目撃が相次いでいる。現在、市内で確認されている生息場所は南区の雁回山周辺のみだが、最近は北、東、中央の各区にまたがる白川沿いに集中し、市街地にも出没。農業被害のほか交通事故なども懸念され、市が対策を急いでいる。

市鳥獣対策室によると、近年の目撃件数は年間20件前後で推移しているが、今年1?7月は既に16件。昨年までは緑川の河川敷や東区の白川沿いで多かったのに対し、今年に入ってからは中央区の渡鹿など市中心部に近い立田山近郊に集中している。同室は「通常、目撃は広範囲に移動する繁殖期の10、11月に多いが、最近は子育て中の4?6月にも多く目撃されるようになった」と指摘する。

捕獲頭数も年々上昇している。同市では2017年度の25頭から21年度は70頭と4年間で約3倍に。立田山では20年度に3頭、金峰山では21年度に1頭をそれぞれ初めて捕獲した。県内の推定生息頭数も19年度は約9万頭と、10年前から3倍に増えている。

 森林総合研究所九州支所(熊本市)の安田雅俊・森林動物研究グループ長(53)は「立田山は分布拡大の最前線。雄のみか、少数ながら雄雌ともに生息し、繁殖を始めている可能性もある」と分析。立田山や金峰山はシカが潜む場所や餌、飲み水など生息環境が整っているため「すみ着きを防ぐにはモニタリングを強化して、早期の捕獲が不可欠だ」と訴える。

 白川沿いでは車道近くにも出没しており、市は交通事故が起きる恐れがあるとして、わなを含めた早急の対策を検討している。他県では既にシカが関係する交通事故が問題化しており、北海道では21年に4009件と5年前の2倍に増加。京都市でも18年にバイクの男性が死亡する事故が起きている。

3日、狩猟免許を持つ東区の男性(76)は、東区下南部の白川沿いで草を食べる雄2頭を確認した。「山の中ではよく見かけるが、住宅街で見つけたのは初めて。こんな所にまでシカが来るなんて」と驚いていた。

 現時点で市内の農業被害は報告されていないが、県内では年間約6千万円(20年度)に上る。同室は「シカは何でも食べる。放置すれば市内でも農業被害が出かねない。目撃したら、ぜひ知らせてほしい」と呼びかける。同室?096(328)2369。(樋口琢郎)

犬吉猫吉編集部2022.08.09

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