ヤンキー猫が娘にケンカを売ってきた! 動物行動学の専門家が読み解く?やんのかポーズ?「実は猫背の語源です」
突然、我が家の愛猫がケンカを売ってきた… 毛を逆立てて女の子に迫ってくるスコティッシュフォールドの動画が評判です。

背中をとがらせ、きにゃこ物語(@kinyakokinyako)さんの次女に迫ってくる「きにゃこ」。目をむいて「おらおら?ッ」とばかりに接近してきます。構ってほしいのでしょうか。次女が逃げても向かって来ます。しかし逆襲を食らうと、最後は家具のすき間に逃げ込んでしまいました。

一連の動きは猫好きさんの間で「やんのかポーズ」「やんのかステップ」と呼ばれています。このアクションにどんな意味があるのでしょうか? 動物行動学が専門の摂南大学農学部・池田裕美先生に読み解いてもらいました。

「やんのかポーズは相手に対する威嚇・防御・闘争の3種類が絡み合った状態の時に見られるポーズです。敵の出現により脳内でノルアドレナリンの分泌が活発になり、交感神経が刺激された猫は立毛筋が収縮することで毛が逆立ちます。これは人の鳥肌と同じです。これにより尻尾が太くなります。また、瞳孔が開き、耳が伏せた状態になります。イカ耳と呼ばれていますね。さらに自分を大きく見せるため背中を高くそびえたたせるのです」

―飼い主に歯向かっているようですが、本気で怒っているのでしょうか?

 「この動きは本気の威嚇以外にも、遊びの時にも垣間見えますので、見たことがある飼い主さんもいらっしゃるかと思います。いわば親や兄弟に対してケンカの練習をしているような感じでしょう。飼い猫が飼い主に?やんのかポーズ?するのは、いざとなったときのために絶対に安全な相手に自分の技を試しているといったところ。狩りごっこと同じ状態ではないかと考えられます。興奮が続くと本気モードになる場合もありますね」

―背中の猫背具合がすごいですね。

「ケンカになるかならないか瀬戸際の姿ですね。恐怖心と攻撃心が入り混じり、最大限に到達したときに?猫背MAX?が出現します。猫背は人の猫背も指しますが、コンラート・ローレンツという動物行動学の父と呼ばれる研究者が、猫が恐怖心と葛藤している態様を指して『猫背』と表現したようです。ただ、英語の論文などでは、「arched back」や「arching back」と表記されており、猫背は和訳になりますので、訳された方のセンスも光っていますね」

 ―猫背MAX! まさにこれ以上丸めようとすると折れてしまいそうです。

 「用語としては?闘争か逃走か(fight or flight)?という葛藤の状態になります。相手が自分より強いのか弱いのか、向こうがひるんだら向かっていく、油断したら逃げる…。よく見るとどちらの動きもできるような体勢を取っているのがわかります。実は、この猫背が出来上がるのは相手から近い脚をできるだけ遠ざけるためだという説もあり、動画をよく見ると少しずつ前脚を後退させているのが分かります。顔は相手の方を真正面から捉え、前後の脚の間を極端に狭めて、背中を思いっきり丸めるので、『行くぞ、来ないのか?』という感じです。このまま相手に向かっていくと横向きのまま進むのでサイドステップになります。このステップが『やんのかステップ』と呼ばれる動きになりますね」

 ◆池田裕美(いけだ・ひろみ) 摂南大学農学部応用生物科学科助教。1988年、熊本県出身。鹿児島大学農学部卒業、九州大学生物資源環境科学府資源生物科学専攻・博士課程修了。専門は動物行動学、動物栄養学。雨の日の軒先で保護した茶トラの「とら」と暮らす。
報知新聞社

犬吉猫吉編集部2022.05.13

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