引退した競走馬みとる養老牧場を開いた女性の思い 移住先の福井で倉庫改修「最期まで寄り添う」
競走馬や乗馬用としての役割を終えたサラブレッドが、余生を過ごす養老牧場が福井県福井市美山地区にある。国内で年間約7千頭のサラブレッドが生まれる一方で、ほとんどが寿命を全うできず、殺処分される。高齢馬に寄り添い、最期をみとってきた牧場の女性は「動物は言葉が話せないからこそ深い部分でつながれるのかもしれない。養老牧場は命のともしびを感じられる一番すてきな場所」と話す。

 雪化粧した山々に囲まれた同市味見河内町の養老牧場「ドラゴン・ランチ」の厩舎(きゅうしゃ)で、益田真由美さん(54)が馬の顔を優しくなでる。

同市出身の益田さんは小学2年生の時、友人と一緒に大学馬術部の練習を見学し、馬の大きさや美しさに感動したという。その後も時間があれば馬を眺め、高校卒業後は地元スーパーに勤めながら、乗馬クラブに通った。馬に触れて世話をするほうが好きになり、負傷した競走馬が保養する石川県の温泉施設で経験を積んだ。

 競走馬を引退後、種牡馬や繁殖牝馬となるのはごくわずか。乗馬用として引き取られても、気性の荒さや人に慣れないなどの理由で処分されるケースは多いとみられる。オーナーから愛情を注がれた馬を代わりにみとってあげたいと、養老牧場創設を考えるようになった。

夫の正次さん(62)が装蹄師として独立したのを機に、当時住んでいた岐阜県から福井に戻った。約14年前に美山地区の祭りに参加した際、「山あいの静かなこの場所なら高齢馬にとって気持ちがいいのでは」と感じ、同地区に移住を決意。2010年にドラゴン・ランチを開いた。

 元倉庫を厩舎に改修し、高齢馬が少しでも過ごしやすい環境を手探りでつくってきた。これまでに自分たちが引き取った6頭を世話し、みとった。「馬たちの出会いが今の牧場の礎となり、やっと形になってきたかな」と話す。

 牧場に現在いる2頭のうち、19歳の「ホイミー」は北海道生まれの元競走馬で、人間の年齢に換算すると80歳前後だ。デビュー前からホイミーを気にしていたという札幌市の女性が昨年12月7日、牧場を訪れた。女性は「表情が生き生きしていて、若いころと同じ感じがする。ここでの生活が合っているのかな」と、ほっとした様子だった。

福井新聞社



PETLIFE24事務局2022.01.19

NEW 投稿一覧 OLD
このページのTOPへ
Copyright(c) INUKICHI-NEKOKICHI NETWORK, ALL Rights Resrved.