9割以上は「家のなか」で起きていた…ペットの骨折を防ぐ方法
小型犬や足の細い犬種で起こりやすい「骨折」ですが、実はペットの骨折の大半は家のなかで起きているのです。獣医師として数々の動物の命と向き合ってきた中村泰治氏が、室内でのペットの骨折を防ぐ方法と、早期発見のためのサインを解説します。

小型犬や超小型犬に多い骨折

【骨折】

気になるサイン

・足を1本だけ高く上げて歩く(挙上(きょじょう))

・足を引きずったり、ケンケンするように歩く(跛行(はこう))

・折れているところを触ると痛がって「キャン」と鳴く

・折れているところが熱をもっていたり、腫れている

・一カ所をひたすら自分で舐めている

・おしっこが出ないなど排尿トラブルがある

・その他、いつもと歩き方が違う、走り方に違和感があるなど

整形外科領域は、大きく骨折や骨の病気と関節の病気に分けることができます。

骨折は、特に前足の骨である橈尺骨(とうしゃっこつ)と呼ばれる場所で多く起こります。後ろ足のすねの骨折や、骨盤の骨折、あるいは太ももの骨の骨折もありますが、圧倒的に多いのは前足の骨折です。

小型犬や超小型犬、あるいは足が細長い犬種で非常に多く、特に、トイプードル、チワワ、ポメラニアンなどのトイ犬種、イタリアン・グレーハウンドなどに多いことが知られています。

自宅内・散歩中の骨折は飼い主の注意で防げる!

かつては外で交通事故にあって骨折することもありましたが、室内飼いやリードでの散歩が徹底されてきた現代では少なくなっています。特に都会では、外で放し飼いのペットは滅多にいないため、交通事故というのはかなりまれなケースです。

反対に、増えているのが家の中での骨折です。現在では、骨折のおおよそ9割以上が家の中で発生していると考えられます。

例えば、高いソファから飛び降りて、滑って転んでしまうケース、あるいは散歩中に足を踏み外してしまうケースなどが多くあります。このほか飼い主が抱っこしているときに、暴れて落下してしまうこともあります。

きちんと着地することができれば骨折することはありませんが、何かのきっかけでバランスを崩したり、着地に失敗すると、細くて長い犬種などの足は、すぐに折れてしまいます。

着地するときは、前足から着地するため大きな負担がかかります。さらに小型犬であれば骨の太さは数ミリ程度しかないため、衝撃に耐えられずに骨折してしまうことがあるのです。

猫でも同様に、自宅内での事故で骨折するケースが少なくありません。例えばキャットタワーから落下したり、階段の上で寝ていて落ちてしまうなどの事故があります。ただし、猫の場合では前足の骨折よりは太ももの骨や後ろ脚の骨などを骨折することのほうが多いです。

骨折の原因は、飼い主が注意することで防げるものが大半です。飼育環境を見直して工夫したり、散歩のときにより一層、注意することなどによって、ペットの骨折は防ぐことができるケースが多くなっています。例えばソファは撤去してしまう、あるいは段差をつけてあげるなどが考えられます。また、床で滑って転ぶのを防ぐためにカーペットやコルクマットなどを敷いて、滑りにくくするなども良い方法です。

普段と違う歩き方をしていたらすぐ病院へ

骨折したときに、最も分かりやすい症状としては挙上と呼ばれる、痛がって足を高く上げる行為が出現します。痛がって足を地面につけるのを避けて、折れた足だけ高く上げたまま歩こうとします。

また、跛行と呼ばれる症状もよく見られます。これは、折れた足をかばうように歩いたり、引きずったり、ケンケンする、ピョンピョンするなど不自然な歩き方をする症状のことです。

このほか折れているところを触ると「キャン」と痛そうな鳴き声を出したり、抱きかかえようとすると痛がって怒るなどもあります。折れているところが腫れたり熱をもったように熱くなる、あるいは自分でずっと一カ所をなめていることもあります。

骨折した場所によっては、排尿や排便にトラブルが起こることもあります。例えば重要な神経が通っている場所に近いところを骨折すると、体に麻痺が起こったり、排尿や排便がうまくできなくなることがあります。

ペットが骨折した場合は、痛くてうずくまってしまうケースももちろんありますが、どちらかというと歩いたり走ったりはするものの、歩き方や走り方がどこか不自然というケースが多くなっています。

歩いてはいてもどこかをかばっているような、いつもと違う歩き方・走り方をしているときは、念のため獣医師の診察を受けたほうが安心です。

1度のレントゲン検査で診断できなければ再検査を

骨折の診断は、まず動物の体を触って診察する、触診を行います。同時にレントゲン検査も実施します。触診とレントゲン検査は、整形外科領域では非常によく行われるスタンダードな検査です。

しかしペットの体を触っても、どこに痛みがあるのか判別しにくかったり、レントゲン検査を行ってもどこが骨折しているのか分かりにくいことがあります。そのようなときはレントゲンの撮影方法を工夫して、繰り返し撮影することがあります。例えば足を曲げてストレスをかけて撮影したり、角度を変えたりなど工夫します。

それでも分からないときは、1、2日おいてから再度撮影することもあります。レントゲン検査を1回行って何も異常がなかったからといって「薬を飲んで様子をみましょう」と帰してしまうと、あとから症状が悪化して、治療が難しくなってしまうケースがあるからです。

レントゲン検査を1回やってみて症状の原因が分からなくても、翌日や翌々日に再検査をすると明らかに腫れが強くなっていたというケースもあります。

そのため歩行などになんらかの症状が出ているときは、主治医と相談して原因を探るための検査をしっかり行うべきだと考えます。

中村 泰治

獣医師

PETLIFE24事務局2021.12.29

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