家宅捜索を受けた犬の販売業者の続報です。業者は廃業する考えで1000匹近くいた犬の大半は県外の団体に移されたとみられます。また早くから業者を問題視していた獣医などが会見を開き、麻酔なしで犬に帝王切開をしていた疑いなどを明らかにしました。
記者リポート)
「ケージに入れられた犬が続々と出てきました。建物からは犬の鳴き声も聞こえます」
長野県松本市の住宅街にある業者の飼育施設。犬が次々と運び出され、「熊谷ナンバー」の車に載せられていました。移送先は埼玉県とみられます。
問題の業者は、劣悪な環境で犬を繁殖させていた疑いで警察の家宅捜索を受けました。2つの施設でおよそ600匹の飼育を保健所に届け出ていましたが、実際には1000匹近くいたとみられています。
住民:
「鳴き声は割合うるさかった」
犬たちは段積みのケージの中で過ごし、運動することはなかったと言います。
従業員(当時):
「いいブリーダーさんだったら広い庭があって放して育てたりすると思うけど、うちは一生ケージの中で暮らしてくからそういう姿見てると、一言で言ったらかわいそう。犬のことが分かっているのは社長しかいないから知識のない私たちがなんか言っても言える立場じゃないから」
捜索後、一部の犬は保健所に保護され従業員の退職も相次いだということです。
犬はどうなるのでしょうか。
松本市の販売業者の代表の自宅を訪ねましたが、家族が「本人はいない」との返事でした。
13日に犬を運び出したのは保護活動も行う埼玉県の業者。代表の男性は次のように話しました。
業者の代表(要旨):
「松本の業者の男性とは、もともと知り合いで廃業の約束をしている。環境が悪いので犬は愛護団体が獣医のもとに運んで、健康状態を見る。そのあと、多くは一般に譲渡する」
業者の代表は「血統証明書がないので販売は難しい。金を儲けるつもりはない」とも話しました。
松本市保健所が廃業の動きを把握したのは移送が始まってから。飼育頭数を減らすため本格的に指導を始める矢先でした。埼玉県の担当課に情報提供し、指導を依頼するということです。
一方、松本市の業者を早くから問題視していた獣医などが14日、会見を開きました。
警察・保健所に情報提供・奥原淳獣医師:
「無麻酔、無資格で連日のように帝王切開を行っていた。これがいかに恐ろしいことか、獣医師として許せない」
獣医の奥原さんは、元従業員から日常的に帝王切開が行われていたことや犬が5段、6段と積まれたケージの中で飼育され、糞尿処理もずさんだったことなどを聞き取り保健所や警察に情報提供していました。
警察の捜査を見守る姿勢ですが、市の保健所が指導する前に犬が移されたことについては納得できないとしています。
警察・保健所に情報提供・奥原淳獣医師:
「災害級の動物虐待の証拠である犬たちがどこにどう流れ誰の元に渡ったか、詳細な報告書を出してもらわないことには誰も納得できない」
14日の飼育施設。大半の移送は済んだとみられ、聞こえてくる犬の鳴き声は13日より、小さくなっていました。