ペットは相続対象?「残された愛犬や愛猫」のために必要な手続き・注意点を解説
相続には十人十色の事情があり、場合によっては家族や親族同士の関係を壊してしまうこともあります。そうした事態を避けるためにはどうすればよいのでしょうか。相続に必要な知識や相続を円満に進めるコツについて、相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『 円満相続ラボ 』の記事から、一部編集してお届けします。
犬や猫などのペットは相続の対象となる? 遺産相続はできるのか
犬や猫などのペットは、法律的解釈では「動産」になりますので、相続財産として扱われます。そのため、遺産相続の対象になります。
皆さんもご存じ通り、相続財産には「プラスの財産」と「マイナスの財産」があり、その「プラスの財産」と「マイナスの財産」を合算して、全体の相続財産を評価するのですが、一般的にペットを評価する際は「評価ゼロ」として扱われます。
ここで問題になるのが、ペットをスムーズに遺産分割できるのか? という事です。被相続人と相続人が同居していた場合は比較的スムーズに進むと思いますが、そうでない場合はどうでしょうか? 飼育環境の問題、住宅環境の問題、動物アレルギーの問題、そして飼育費の問題。様々な問題が噴出してきます。
さらに、平成25年に施行された「改正動物愛護管理法」において、ペット飼養者に対して「終生飼養」を義務化する文言が追加されました。これは、犬や猫などのペットを一旦迎え入れた場合、その個体の面倒を生涯に渡り、見届けなくてはならないというものです。
「終生飼養」という文言が追加された背景としては、一時的な感情により、安易にペット達を迎え入れてしまい、ペット達と生活していく中でその感情が冷めてしまい、飼主の一方的な都合により保健所へ持ち込まれた結果、犬猫の殺処分が年々増えていたという社会背景があります。
犬や猫などのペット達は、法律的には「動産(物)」として扱われますが、「終生飼養」を義務化した事により、飼主の「命」に対する責任を明確にしたのではないかと思います。
遺言書でペットを引き渡すことは可能? 相続放棄された場合は?
冒頭で説明した通り、犬や猫などのペットは「動産」という財産なので、遺言書を活用して、ペット達を引き渡す事は可能です。しかし、遺言書にペット達の引き渡し先を明記するだけで、本当に大丈夫なのでしょうか? そこには様々な落とし穴が潜んでいます。
遺言書は遺贈者(財産を与える人)からの一方的なメッセージですので、そのメッセージを受け取った方達は、有難く受け取る事もできますし、逆に放棄する事もできます。
相続財産には「プラスの財産」と「マイナスの財産」があります。「プラスの財産」だけ貰えるならば、これほど有難い事はないのですが、もし「マイナスの財産」だけを遺されたら、受け取る側にしたら、本当に迷惑極まりない話ですよね。この事から、相続人や受遺者は財産を放棄する事ができるようになっています。
それでは、遺言書で「ペットの引き渡し先」を明記していたにも関わらず、その「ペットの引き渡し先」が放棄したら、行き場がなくなったペット達はどうなるのでしょうか?
この場合、大半は保健所へ収容されることになります。その後、民間の動物愛護団体や里親ボランティアが譲渡先(里親)を探す協力をしてくれますが、譲渡先が見つからない場合は、保健所にて殺処分されてしまいます。
また、遺言書通りに「ペットの引き渡し先」がペット達を相続したとしても、そこにペット達に対する愛情が無ければ、そのペット達を保健所に持ち込んでしまうケースも少なくありません。
まさにこれが、遺言書の落とし穴です。それでは、このような最悪の事態を回避するには、どのようにしたら良いでしょうか? それは、飼主亡き後のペット達の面倒を看てくれる方を遺言書に明記し、さらに、その方と「死因贈与契約書」の締結をする事です。
この「死因贈与契約書」とは、飼主が亡くなったら、ペット達の面倒を看てくれる方にペット達を贈与するという契約です。贈与契約は遺言書と違い、双方同意の契約なので、放棄をする事はできません。また、遺言書内で、ペット達の飼育費も一緒に遺贈する事を明記しておけば、ペット達の面倒を看てくれる方の負担が減り、より安心してペット達を託すことができるでしょう。
ペットの引き渡しのために被相続人が生前にしておくべきことをチェック!
一昔前までは、三世代同居という家族構成は当たり前でした。このような家族構成であるならば、ペット達の行く末をそこまで心配する事はなかったでしょう。しかし、現在の日本社会は核家族化が進んでおり、飼主が他界後に遺されたペット達の行く末までも考えなくてはいけない状況になっています。それでは、どのような準備をしていたら、安心してペット達と生活ができるのか説明していきます。
まずは相続人達(子供達)に相談しましょう!
相続対策で一番大事なことは、相続人達(子供達)とちゃんと話し合うという事です。子供達が遺されたペット達をちゃんと面倒を見てくれるのであれば、安心してペット達と生活できるかもしれませんが、子供達にも様々な事情があり、引き取れない場合があります。このような時には様々な対策を講じる必要が出てきます。
それではどんな準備をすればいいでしょうか? 家族同然に生活してきたペット達の行く末を考える際には、以下の項目を明確にしないといけません。それぞれチェックしてみましょう!
誰が(どこが)面倒を看てくれるのか?どこで、面倒を看てくれるのか?(飼育環境)終末期医療の為の入院や介護施設に入居した際の受け入れ先飼主他界後のペット達の飼育費ペット達の死後の整理(ペット火葬や供養など)1から5の項目を全て明確にイメージする事はできたでしょうか? イメージはできたけど、具体的にどのようにしたら良いのか分からないという方が大半だと思います。実は、それを解決してくれる仕組みが「信託」を活用した仕組みです。
約10年程前から、民事信託を活用した「ペットに関する信託契約」が案内されるようになりましたが、この仕組みを活用する飼主は多くありませんでした。理由は様々だと思いますが、一番の要因は飼主が準備しないといけないペット達の飼育費が高額すぎるという事です。
例えば、飼主が60歳、飼っているペット(小型犬)が3歳としましょう。そしてペットの飼育費を年間20万円と想定した場合は、飼主が準備しないといけない飼育費は、「ペットの余命×年間飼育費」という事になります。仮にペットの余命が15年あるとしたら、「15年(ペットの余命)×20万円(年間飼育費)=300万円」を準備しないといけません。更に医療費や様々な手数料などを加味するともっと高額の準備金が必要になります。
犬や猫は課税対象になる? 相続税の計算方法を解説!
犬や猫のようなペットは、法的解釈では「動産」なので、相続財産にはなりますが、相続税の課税対象になるかというと、一般的にはならないと考えた方が良いと思います。
但し、世界的に稀な犬種や猫種で、一般的な市場で高額で取引をされているとか、世界的に有名なチャンピオン犬(猫)で、種付け料が一般的なそれと比べると、数十倍、数百倍で取引をされ、これからも種付けできる状態にあるとかであれば、課税対象財産として評価する必要が出てくると思われますが、一般的には課税対象財産としては扱われないと思います。
遺言書などで、ペットとペットの飼育費(現金)を一緒に相続した場合、ペットの飼育費(現金)は課税対象財産として扱われるので注意しましょう。また、ご自身の財産を遺す際に相続税を支払う必要があるかどうかは、相続税の計算式があるので、それに当てはめると大体把握できます。
(1)相続対象財産を全て洗い出す。
(2)全ての相続対象財産から相続税の基礎控除額を差し引く。
※基礎控除額=3000万円ー(法定相続人×600万円)この段階で、全ての相続財産が基礎控除額より少なければ、相続税は掛からないという事になります。
(3)法定相続分に応じた取得金額に対して、相続税率を掛けて、相続税の総額を算出する。
(4)相続人が実際に取得した財産に応じて、相続税額を配分する。
ここで注意するべきことは、相続対象財産を評価する際には、様々な特例や財産評価の方法があります。ご自身の判断のみの計算だけではなく、ご自身の財産の棚卸をする意味でも、専門の税理士に相談しましょう。
相続税の計算をした際に、「相続税が掛からないから相続対策をしなくて良い」という事ではありません。実は相続が発生した家庭の中で、実際に相続税を支払っている家庭は、全体の8%しかないと言われています。にもかかわらず、遺産相続争いは一向になくなりません。これはなぜでしょう?
これは遺す側がちゃんと「遺産分割の対策」をしてないからです。「遺産分割の対策」の一丁目一番地は遺言書です。遺言書は家族に贈る最後のメッセージです。残された家族たちが笑顔で故人を偲ぶ事ができるように、そして遺されたペット達が悲しい末路を迎えなくて済むように、一日でも早く様々な対策に取り組みましょう。
株式会社サステナブルスタイル
後藤 光
後藤 光,円満相続ラボ
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犬吉猫吉編集部2022.11.30
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